2008.12.16 Tuesday
身体が病気になると、健康な時には見られない様々な症状が現れる。
全身症状としての痛みや発熱、だるさや倦怠感、嘔吐や下痢などの消化器症状、血圧の変動や
頻脈などの循環器症状、咳や痰、咽頭痛などの呼吸器症状、その他代謝障害や内分泌障害などによる症状もみられる。
身体疾患の病名が何であれ、また急性期であれ慢性期であれ、大なり小なりこれらの症状がみられるものである。
しかし、こころの病気の場合にはこれらに対応する症状はあるのだろうか。こころが病気になるということは、一体どういうことなのだろうか。さらにこころの何処が病気になるというのだろうか。
こころの働きを調べていくと、いくつかの精神機能に分けることができる。それは意識、意欲、記憶、知能、知覚、思考、感情、そして自我意識である。
人の精神機能がこれだけであるというわけではないが、こころに問題を抱えている人を調べていくと、これらの機能に問題があることがわかってきた。
例えば、うつ病の人の憂鬱感、抑うつ気分は、「感情」という精神機能が障害されて起こる症状であり、考えが浮かばず、頭の中が空っぽになったようだという訴えは、「思考」という精神機能が障害されて起こっているのである。
また気力がなく、なにごとにも億劫になり、人嫌いになって、動作も鈍く、話し方も単調になるのは、「意欲」という精神機能の障害ということができる。
ということは、うつ病はこころの働きのうち、「感情」と「思考」と「意欲」という精神機能が障害される病気であるということができる。さらに不眠、食欲不振、便秘、頭重感、月経不順などの身体症状も
見られることも少なくない。
同じように考えていくと、統合失調症も「感情」、「思考」、「意欲」が障害されるが、うつ病とは精神機能障害の内容に違いがある。
たとえば「思考」障害は、さらに考え方の道筋である「思路」の障害と、考え方の内容である「思考内容」の障害に分けられる。
「思路」の障害の特徴は、話にまとまりがなくなり、話の筋道が通らなくなり、理解できなくなる。また話が突然中断して先に進まなくなることがある。
「思考内容」の障害としては、関係妄想、被害妄想、追跡妄想、誇大妄想などがある。
さらに幻聴などの「知覚」障害があり、特徴的であるのは「自我意識」が障害されることで、自分が考え、自分が行動しているという自己帰属感が障害される。
その他の症状として病識の欠如がある。患者さんは自らを客観視することができずに、異常なこころの体験そのものの非合理性に気付かなくなる。
認知症では「記憶」の障害が初発症状としてみられ、記憶の中でも特に「記銘力」の障害が目立つ。「思考」の障害としては、了解力低下や思考能力低下、注意集中困難などがあり、物盗られ妄想が見られることがある。
「感情」の障害としては、多幸的になったり、怒りっぽくなったり、抑うつ的になったりする。「意欲」の障害としては、徘徊、興奮、乱費、性欲亢進などが見られることがある。
これらの精神機能障害は、身体疾患と同じように一つの病気の単位として捉えることができ、現在では治療法が確立しているものである。
もちろん、病気の原因は十分に解明されているわけではないので、原因を取り除く治療をすることはできないが、患者さんを苦しめる病気の症状を改善する治療法は、先人たちの努力のおかげでたくさん見つかってきた。
いろいろな治療法があるが、その中でも一般的に行われているのは薬物療法である。
不安があれば抗不安薬、気分が落ち込んで、憂鬱な気持ちなら抗うつ剤、幻聴や妄想には抗精神病薬、眠れなければ睡眠導入剤を使う。もちろん薬には副作用があるので、十分注意しながら治療を継続しなければならない。
しかし、こころの病気をそんな簡単に考えて、薬で治すことができるのかと不信感を持たれる人もいるのではないだろうか。そういう人はこころの病気のほんとうの辛さ、苦しさを分かっていない人だと思う。
不安の気持ちだけが頭の中をかけめぐっている人、生きることに疲れ果て、辛くて死ぬことだけを考えている人、妄想や幻聴に日夜さいなまれている人、そういう人たちを薬が一時的にでも救ってくれるのである。これはすごいことだと思う。
もちろん薬物療法は対症療法であり、症状を改善することはあっても、病気の原因を取り除くわけではない。しかし、精神的に不安定なこころの状態では、ことここに至った原因を追究し、それを改善する方法を見つけることができないのである。
薬物療法で精神の安定を図りながら、なぜこのようになったのかを、具体的に探し、検討していく中で、こころの病気に陥ったきっかけや、考え方の偏りなどがみえてくる。
それらをどのようにして改善していくかを主治医といっしょに考え、具体的な改善策を実行して、もしうまくいかなかったら、別のやり方をかんがえていく。この作業を繰り返しながら、少しずつではあるが、こころの病気が再発しないやり方を学びとっていくのである。
脳科学の進歩のおかげで、いろいろなことがわかってきた。病気の原因を解明するために今も研究がつづけられ、より原因療法に近い治療法を開発するための努力がなされている。
全身症状としての痛みや発熱、だるさや倦怠感、嘔吐や下痢などの消化器症状、血圧の変動や
頻脈などの循環器症状、咳や痰、咽頭痛などの呼吸器症状、その他代謝障害や内分泌障害などによる症状もみられる。
身体疾患の病名が何であれ、また急性期であれ慢性期であれ、大なり小なりこれらの症状がみられるものである。
しかし、こころの病気の場合にはこれらに対応する症状はあるのだろうか。こころが病気になるということは、一体どういうことなのだろうか。さらにこころの何処が病気になるというのだろうか。
こころの働きを調べていくと、いくつかの精神機能に分けることができる。それは意識、意欲、記憶、知能、知覚、思考、感情、そして自我意識である。
人の精神機能がこれだけであるというわけではないが、こころに問題を抱えている人を調べていくと、これらの機能に問題があることがわかってきた。
例えば、うつ病の人の憂鬱感、抑うつ気分は、「感情」という精神機能が障害されて起こる症状であり、考えが浮かばず、頭の中が空っぽになったようだという訴えは、「思考」という精神機能が障害されて起こっているのである。
また気力がなく、なにごとにも億劫になり、人嫌いになって、動作も鈍く、話し方も単調になるのは、「意欲」という精神機能の障害ということができる。
ということは、うつ病はこころの働きのうち、「感情」と「思考」と「意欲」という精神機能が障害される病気であるということができる。さらに不眠、食欲不振、便秘、頭重感、月経不順などの身体症状も
見られることも少なくない。
同じように考えていくと、統合失調症も「感情」、「思考」、「意欲」が障害されるが、うつ病とは精神機能障害の内容に違いがある。
たとえば「思考」障害は、さらに考え方の道筋である「思路」の障害と、考え方の内容である「思考内容」の障害に分けられる。
「思路」の障害の特徴は、話にまとまりがなくなり、話の筋道が通らなくなり、理解できなくなる。また話が突然中断して先に進まなくなることがある。
「思考内容」の障害としては、関係妄想、被害妄想、追跡妄想、誇大妄想などがある。
さらに幻聴などの「知覚」障害があり、特徴的であるのは「自我意識」が障害されることで、自分が考え、自分が行動しているという自己帰属感が障害される。
その他の症状として病識の欠如がある。患者さんは自らを客観視することができずに、異常なこころの体験そのものの非合理性に気付かなくなる。
認知症では「記憶」の障害が初発症状としてみられ、記憶の中でも特に「記銘力」の障害が目立つ。「思考」の障害としては、了解力低下や思考能力低下、注意集中困難などがあり、物盗られ妄想が見られることがある。
「感情」の障害としては、多幸的になったり、怒りっぽくなったり、抑うつ的になったりする。「意欲」の障害としては、徘徊、興奮、乱費、性欲亢進などが見られることがある。
これらの精神機能障害は、身体疾患と同じように一つの病気の単位として捉えることができ、現在では治療法が確立しているものである。
もちろん、病気の原因は十分に解明されているわけではないので、原因を取り除く治療をすることはできないが、患者さんを苦しめる病気の症状を改善する治療法は、先人たちの努力のおかげでたくさん見つかってきた。
いろいろな治療法があるが、その中でも一般的に行われているのは薬物療法である。
不安があれば抗不安薬、気分が落ち込んで、憂鬱な気持ちなら抗うつ剤、幻聴や妄想には抗精神病薬、眠れなければ睡眠導入剤を使う。もちろん薬には副作用があるので、十分注意しながら治療を継続しなければならない。
しかし、こころの病気をそんな簡単に考えて、薬で治すことができるのかと不信感を持たれる人もいるのではないだろうか。そういう人はこころの病気のほんとうの辛さ、苦しさを分かっていない人だと思う。
不安の気持ちだけが頭の中をかけめぐっている人、生きることに疲れ果て、辛くて死ぬことだけを考えている人、妄想や幻聴に日夜さいなまれている人、そういう人たちを薬が一時的にでも救ってくれるのである。これはすごいことだと思う。
もちろん薬物療法は対症療法であり、症状を改善することはあっても、病気の原因を取り除くわけではない。しかし、精神的に不安定なこころの状態では、ことここに至った原因を追究し、それを改善する方法を見つけることができないのである。
薬物療法で精神の安定を図りながら、なぜこのようになったのかを、具体的に探し、検討していく中で、こころの病気に陥ったきっかけや、考え方の偏りなどがみえてくる。
それらをどのようにして改善していくかを主治医といっしょに考え、具体的な改善策を実行して、もしうまくいかなかったら、別のやり方をかんがえていく。この作業を繰り返しながら、少しずつではあるが、こころの病気が再発しないやり方を学びとっていくのである。
脳科学の進歩のおかげで、いろいろなことがわかってきた。病気の原因を解明するために今も研究がつづけられ、より原因療法に近い治療法を開発するための努力がなされている。
ハートふるメッセージ | 18:35 | - | -